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演奏家からのお便り 6 

今日は掛川出身のバイオリニスト長尾春花さんからのお便りです。

遠くハンガリーから届きました。



 日本の皆さま、掛川の皆さま、世界中が大変な状況の中におりますが、いかがお過ごしでしょうか。私が住んでいるハンガリーは、20213月現在、今までで一番大きな第3波に入ってしまい、再びロックダウン中です。

 先日、日本は東日本大震災から10年を迎え、私も311日に日本のチャリティーコンサートで演奏させて頂きました。思えば2011年の震災直後、何もできないもどかしさに苦しんだ末、当時「若いアーティストを育てる演奏会」実行委員会にご相談したところ、数週間でチャリティーコンサートを企画・準備してくださいました。告知から数週間だったにも関わらず、会場には満席以上の方々がいらしてくださり、皆さまのお気持ちを被災地に届けることが叶っただけでなく、私自身の喪失感をも救ってくださいました。

 その後も度々、故郷掛川での演奏機会を頂き、佐藤卓史さん、實川風さん等、素晴らしいピアニストによる、見事なベーゼンドルファーの音色と共に演奏させて頂きました。ベーゼンドルファーの音は、打鍵後に音が痩せないためか、ヴァイオリンの音色と一緒に、ある時は包容力のある、ある時はよりジューシーな、この上ないハーモニーを生み出してくれます。

 かねもカルチャーホールにバックハウスのベーゼンドルファーが入ってからは、福田さんの完璧なケアのもと、恐れ多いながら、特別に魔法のような共演の時間も経験させて頂きました。楽器が音楽の収まるべきところを示してくれるように、この楽器と演奏している瞬間、そこに自我はほとんど無くなり、音楽のメッセージが浮き彫りになるように、その空間は音楽だけになります。こんな神様のようなオーラを放つピアノには、恐らく出会ったことがありません。(これを書きながらも、感動が蘇ってきています。)

 私がハンガリーを拠点にするようになってからも、このような得難い機会を頂けることに感謝しきれません。昨年からはこの新型コロナウイルス感染症の影響で生演奏を聴ける、お届けできる機会も奪われてしまっていますが、「MUSICART」と名前も新たに、少人数のサロンコンサートから少しずつ始められるとのこと、とても嬉しいです。

 この世界的な感染症拡大から1年以上、私たちは今も例を見ない困難の中にいます。ほとんどの演奏会が中止、幸い中止にならなくても、無観客の配信のみで、マスクを装着して、カメラとマイクに向かって演奏しています。2016年より私がコンサートマスターを務めているハンガリー国立歌劇場も、閉鎖を余儀無くされており、何度もPCR検査を受けながら、配信によるオペラ公演や室内楽コンサートを続けていますが、同時に同僚の中に感染者も出ています。2019年より教えているリスト音楽院も登校禁止、レッスンは全てオンラインで行われ、学生たちの試験も録画で行われています。そんな中でも、希望を持って、オンラインのオーディションやコンクール、卒業試験に向けて準備する学生の姿に励まされ、私自身も作品や自分の演奏技術、または言語学習等にも改めて向き合う時間を持つことができています。

 日本に帰国した際には、2週間の自主隔離期間があるため、今までになく家族との時間を持てた他、過去の録画・録音を整理する中で、"harchives"(春花 + アーカイヴス)という形で公開し始めました。

https://www.youtube.com/channel/UCS-v7WbvqeHsXRohRfccsjw

1日も早く、再び皆さまと1つの空間で音楽が共有できる日を、マスク無しで演奏できる日を、気軽に外出できる日を、周りの方々と楽しくお話しできる日を、外でご飯が食べられる日を…心待ちにしています。皆さまのご無事とご健康を、心から願っています!










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