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長尾春花&前田拓郎 Duo Ricital

【4.27 長尾春花&前田拓郎デュオリサイタル】



 長尾春花。掛川でクラシック音楽に親しんでいると、彼女の名前をよく耳にする。学生の頃から注目され、その卓越した演奏技術と愛らしい人柄から、彼女を長年応援しているファンも多い。現在は海外を拠点に活躍している彼女が久々に故郷で開催するリサイタルとあって、この日を待ちわびていたという人々で会場は賑わった。


 今回のプログラムは、バッハやモーツァルトなどの耳なじみのある物から、彼女がコンサートマスターを務めるオーケストラのあるハンガリーの作曲家、バルトークの作品まで、こだわりの選曲となっていた。耳なじみのある曲も、彼女の演奏で聴くと随所に新たな発見がありとても新鮮な気持ちで楽しめた。また、大胆さと繊細さの振れ幅がとても大きく、聴いていてドキドキワクワクする。彼女の豊かな表現に前田のピアノも見事に呼応し、とてもスケールの大きな世界を見せてくれた。


 中でも印象的だったのは、前半最後に演奏されたチャイコフスキー『ワルツ・スケルツォ』だ。題名を聞くと軽やかな音楽を想像するのだが、彼女の奏でる音はとても深く、どこか人間味を感じさせ大人の雰囲気をまとったワルツに仕上がっていた。音色は深いけれど、全体的には緩急や音の輪郭の表現によって心躍る演奏。中間部は深い音色を活かして哀愁を帯びた印象にするなど、多くの経験を積んだ今の彼女だからこそできる表情豊かな演奏であった。


 アンコールの途中には、同席していた長尾の愛娘の声が聞こえる場面もあった。演奏中、その声にふっと笑みを浮かべる彼女の表情はとても美しかった。その後のMCで彼女の語った「娘も泣き声で演奏に参加しました」という一言に、彼女が異国の地でおおらかな気持ちで家族との良い時間を過ごしているのだろうなと想像し、あたたかい気持ちになった。


 掛川に生を受けてすくすくと育ち、まっすぐな瞳で演奏していた幼少期。国内外で研鑽を積む中で洗練されたテクニックを発揮した時代。そして海外で新たな家族や仲間と過ごす現在。その時々で得たものが、彼女の奏でる音楽には現れている。さて、この先彼女はどんな表現で私たちを楽しませてくれるのだろう。これからがますます楽しみだ。


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 今回のリサイタルに華を添えたのは、ケビン・コスイナー氏による絵画や写真の展示。

様々な芸術をこよなく愛するコスイナー氏は、かねものコンサートの常連でもある。今回の作品の中にはこの日のプログラムに合わせて描き下ろした作品もあり、長尾がMCでも紹介した。その中で彼女は「同じ曲でも自分と同じインスピレーションを感じた物と、自分とは違うモノを感じる物とあり、芸術のぶつかり合い、感性の違いが面白い」と語った。

 そう、それが面白いのだ。

 芸術に答えはない。そこにあるのは、私が、あなたが、どう感じたかということだけ。

同じ作品を鑑賞した時、それぞれに感じたことを語り合いながら共鳴したり、新しい気づきを得ることはなんと楽しいことか。世界中のあらゆるところでそんな豊かな時間を持つことができたら、それが平和ということなのではないだろうか。(文:M)

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